『メイドイン香港』解説

 じんのひろあき、お得意の群衆劇。

 舞台上で三十人近い役者が右往左往する、

 1993年3月に上演した『メイドイン香港』の初演戯曲完全版です

 この戯曲は1993年の岸田戯曲賞の候補になり、次のような選評が発表されました。

>>『メイドイン香港』のじんのひろあき氏の集中力とエネルギ-には驚かされました。氏の現風景たるや、まるで香港の裏路地のようで、氏は路地の向こうのまだ見ぬ風景へ歩き出そうとしているのではないかと、感じさせられました。

 岡部耕大

>>選考会では、すでに岸田賞そのものを批評する存在として活躍する、鄭義信、鴻上尚史よりも、更に新しい可能性の発見と言う事で、じんのひろあき『メイドイン香港』を押した。

 佐藤信

>>ロケットの撃ち上げの力として、一番おもしろく感じたのは、じんの氏の『メイドイン香港』であった、香港在住の日本人会社員の自宅が、突如香港軍によって占領されていく見立て方は、香港そのものが、占領された小さなマンションの一室に閉じ込められたようで、マンダラ絵のようなおもしろさを感じさせた。

 野田秀樹

<物語>

1997年、3月。
香港の中国返還の4か月前。
香港の国境近く、上水にある日本人社宅に、香港を旅行中の日本人が次々に送り込まれてくる。
彼らはこの日本人社宅を、野戦病院に改造するように命令されて来たのだった。
香港は租借期限が切れる7月に、イギリスから中国に返還されるのを拒否し、中国並びにイギリスに対して独立戦争を起こしたのだった。
そして、独立国家となった香港は、中国からの移民を拒否して、籠城状態となった。
そんな大局の流れはさておき、野戦病院の日本人達は、マ-ジャンと花札と医療行為に明け暮れる。
やがて、そんなだらだらした生活の中から、香港独立戦争の本当の理由が浮かび上がってくるのだった。

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