『制服を買いに』

作・じんのひろあき

登場人物・小室 徹也


中古制服専門店に現れる小室。
アルバイトの女の子、まみりんが、応対に当たっている。

こんにちは・・あれ・・店長は? あ・・そう・・(君は)バイト? あ・・そう・・すぐ戻る? すぐ
ってどのくらい? あ・・そう、なんだ・・

と、小室、雙葉の制服を取り出して。

この前ここで、この制服買ったんだけど・・

と、その小室が出した、制服をまみりんが触ろうとしたよう。

あ・・手、綺麗? あ、そう・・注文したのって、雙葉の制服なんだけど・・このスカーフ・・これ雙葉
じゃないよね・・違うでしょ・・
本当は今日お金払いに来るつもりだったんだけど・・・こんなわけだからさ・・・ちょっと調べてくれ
る? 発送した時はどうだったのか? 小室・・小室・・・伝票とかないの? その都度捨てちゃうんだ
・・・証拠を残さない? そんな・・ヤバイ職業じゃないんだから・・そうそう、後払い・・俺はだっ
て、あれだもの・・常連さんっていうか・・店長さんが、制服好きな人に悪い人はいないって・・信用取
引になっちゃったよ・・・

スカーフだけどっかに混じってるんじゃないかな・・・いや、駄目だよ・・そんなの駄目だよ・・・似た
ような色でなんて・・だって俺わかるもの・・・一目見て違うなって・・・俺の目はごまかせないよ・・
・だって・・好きだもの・・

雙葉って、そんなに人気があるんだ・・・やっぱりねえ・・着てみたいよね・・こういうの・・一度はね
・・・いや、俺は着ないけどさ・・・俺が着ると思った? 着ないよ、着ない、着ない・・セーラー服着
て、うっとりしているような男に見える? 変態じゃないんだからさ・・

と、同意を求められてまみりんは困るが、とりあえず同意したよう・・・

・・・伝票ない? ないんだ・・まいったな・・店長すぐ帰って来るんでしょ・・待つよ・・待つ待つ・


と、辺りの制服を見回しているがやがて。

あ・・これ知らないな・・これ新入荷でしょ・・前来た時なかったもん、店長言ってくれりゃいいのに・
・これはあれだよ・・自由が丘の・・

と、まみりんが答えたよう。

詳しいじゃない・・会った事ないよね・・知らないでしょ・・俺・・常連さんなんだけど・・最近なんだ
・・名前・・なんていうの? まみりん? まみりん・・・どういう字書くの?
真の真に・・美しい・・・りんは?・・・不倫の倫・・あ・・そうなんだ・・

こっちさあ・・こっちなに、こっちの奥・・試着室? 何で? お客が着てみる? 変態じゃないの?

と、気がついた。

俺の雙葉の服・・どっかの変態じじいが袖を通したって事ないよね・・・ないよね・・ああよかった・・
世の中油断も隙もありゃしないからな・・・

まみりんってさあ・・いくつ? わかんないよ・・21とか・・・わかんないな・・・18? 本当に?
若い、若い・・! あと2か月で、18? じゃあ、今17? ・・17か・・最初っからそう言ってよ
・・わかんなかったな・・俺とした事が・・生まれた時から二十歳の顔してたんだ・・嬉しくないよね・
・そんなのって・・親恨んだ?
こういう服だからかな・・服で印象って変わるよね・・・

と、さも思いついたように。

まみりん・・・まみりん・・・(強く)まみりん・・これ、着てみない・・? どうしてって・・・試着
だよ、試着・・・

と、まみりんのいるカウンターをくぐるか越えるかして、まみりんのとこまで来ようとする小室。
が、ちょうどその時、客が入って来た。
何気ないふりをして、知らん顔して、また制服が掛けてある辺りに戻る小室。
ちらちらと、カウンターのまみりんの方を見る。
そして、客が出て行った。
小室もつられて。

ありがとうございました・・・・

そして、すぐにまみりんの方に戻って。

今の・・中学生じゃない・・いいの・・いいんだ・・中学生がパンツ売りに来るんだ・・あの少年、どこ
でこんな物手に入れるんだ? お姉さんの? あ、なるほどね・・このパンツ千円で買って、いくらで売
るの? 一万三百円・・需要と供給は、どんな状態でも発生するんだね・・・

洗いざらしじゃない・・このパンツ・・こういうのって、あれなんじゃないの? シミとか匂いとかつい
てないとまずいんじゃないの? いや、まずいって事ないんだけどさ・・あ、そう・・洗いざらしでない
と興奮しない奴っているんだ・・・

中学生が売りに来たりするんだ・・・あ・・そうか・・制服って本人が売りに来るって事あるもんね・・
本人って、高校生だもんね・・まみりんも売りに来たの? 制服? ・・どこの高校行ってたの?

雙葉? これ、君の制服なの?
うわぁぁぁ・・そう・・なんでがっこ辞めちゃったの? ・・・・管理教育か・・管理されちゃってるか
らね・・でも、社会に出ても同じよ・・管理されちゃうんだから・・そんな事あるよ・・まみりんだって
今ここ時給でしょ・・時給で管理されてるじゃない・・時給で自分の時間売ってるじゃない・・ねえ・・
どこいってもそうよ・・それはいいんだけどさ・・
まみりん・・ちょっと、これ着てみようよ・・店番・・俺がやるから・・大丈夫・・大丈夫・・パンツ売
りに来たら千円で買っとくから・・

試着だよ、まみりん・・・まみりん・・まみりん・・やれよ!

と、試着室に入ったよう・・
小室、自分のバックからビデオを取り出して、セットする。
ファインダーを覗いて、バランス合したりしている。
やがて、まみりんが制服を着て出て来る。

似合うじゃない・・似合うよ・・・ちょっとそこで回ってみて・・回って・回って・・回れよ、まみりん
! あ・・いいじゃん・・・

靴下もさ・・白いのないの? ある? ちょっと履いてみない? その色はさ・・ヤンキーみたいだよ・


ちょっとビデオ撮っていいかな・・変わったビデオカメラだろ・・重いんだよ・・かなりのショックに耐
えられるから・・生活防水装甲ビデオなんだよ・・大丈夫・・そんな危ない事させないから・・記念に・
・いいだろ・・いいよな、まみりん・・

え? あ・・本当だ・・・ビデオのここんとこになんで・・髪の毛がこんなに絡んでるんだろ・・あ・・
あ・・長いなこの髪・・あ・・取れた取れた・・まみりん・・準備はいい?・・いいよ、いいよ・・海で
も山でも・・まみりんの意見尊重してもいいよ・・とりあえず、今日はここで、スカートちょっと持ち上
げてみて・・(強く)持ち上げろよ、まみりん・・いいよ・・まみりん・・もっと(持ち上げろよ)・・
もっと・・

と、店長が帰って来た。

あ・・店長・・おかえんなさい・・なにって・・ちょっと・・・雙葉の制服の試着・・・店長・・・雙葉
の制服のさ・・スカーフが・・・ああ、じゃあいいよまみりん・・もう制服脱いでも・・(店長に)やっ
ぱり? やっぱり? だと思ったよ・・・別に送るんだったらそう書いといてくれればいいのに・・

と、試着室のまみりんに向かって。

・・まみりん・・俺の制服、きちんとたたんどいてね・・

店長・・いい子見つけたじゃない・・まみりん・・・いいね・・

店長・・まみりん売ってよ・・いくら? 八百円? 本当に? あ・・なんだ・・時給八百円か・・最近
の人身売買の相場がそこまで行ってるのかと思っちゃったよ・・じゃあさ・・その倍払うから・・

制服着せて、店外デートってのは? いい? まみりんに聞いていいっていったら? いいよそんなの聞
かなくったって・・

制服の中身に人格なんか認めないよ・・・じゃ・・三時間分ね・・

と、ポケットからお金を取り出して、店長に渡す。
と、まみりんが着替えている試着室の方に行って・・

おい・・早くしろよ・・金払っちまったんだからな・・まみりん・・・

暗転


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