第72話  『おみくじ』
  神社。
  龍之介と涼二がおみくじを手に立っている。
  二人、おみくじの内容を読み上げている。
涼二「待ち人・・来ず・・恋愛・・行き違いが続く・・今の愛を信じぬこと・・願望(のぞみ)胸に秘め、実行に移さぬ事、他言も無用・・」
龍之介「(静かに笑っている)は・・ははは・・はははは・・」
涼二「旅立ち、今一度考えよ・・龍ちゃんのは?」
龍之介「待ち人・・来るが用をなさぬ・・恋愛・・思い込みと知る・・願望(のぞみ)叶わぬと思え・・」
涼二「同じ大凶でも、内容は違うんですね・・」
龍之介「きっついなあ・・俺、生まれて初めて見たけど・・大凶ってのは、大凶だけあって、一言一言がきついね・・」
涼二「切れ味がいい・・」
龍之介「失物(うせもの)・・出ず」
涼二「就職、高望み、せぬこと」
龍之介「へこむねえ」
涼二「へこみますねえ」
龍之介「なんでこんな大凶が・・たて続けに出るかなあ」
涼二「でも、今ねえ、この時期、大吉とか出てもねえ」
龍之介「ああ、ウソくさくてそんなの、信用できねえからなあ」
涼二「大凶でよかったんじゃないんですかね」
龍之介「まあな・・大安じゃなくて、仏滅に結婚式をやるカップルって多いっていうからな」
涼二「どん底からの出発ってやつですか」
龍之介「この神社、いいね・・こんな大凶のおみくじ、いっぱい入れやがってよ」
涼二「ね、この神社いいでしょ、龍ちゃん」
龍之介「いいねえ・・」
涼二「良かったでしょ、来て」
龍之介「ちょっと寒いけどな」
  と、涼二、またおみくじを読みあげ始める。
涼二「現状よりも悪くなることは無いとたかをくくっていると、さらなる悪化を見る。人に頼ろうとせず、自分自身を見つめ直し、出来る事から片付けていくしかない。耐える事もまた必要なり・・」
龍之介「ははは・・やなこった」
  暗転。